第2回 まずは一枚綺麗な写真を撮るために

第2回 まずは一枚綺麗な写真を撮るために

さて、第1回はいかがでしたか。第1回を読んでいない方はこちらをご参照ください。それでは第2回の解説に入りたいと思います。

星景写真はまず考えること、調べることから始まる

第1回は必要な機材についてご紹介しましたが、2回目はいよいよ星景写真の撮影手順や方法についてご紹介します。ですがその前に、星景写真を撮影する上で大事なことがあります。それは手順や方法ではなく、どういった星景写真を撮影したいかというイメージを膨らませることです。そのイメージがはっきりしていれば、用意しなければいけない機材や、撮影場所、時期が自ずと決まってきます。星景写真がうまくなるコツ、それは撮影に出かける前のシミュレーションをしっかりするということなのです。

様々な星景写真

では星景写真の種類について触れたいと思います。一般的なのは、広角レンズを用いて、星空を広く、地上風景も広く切り取った写真です。

写真1

広角レンズを使って撮影した星景写真

この写真では満天の星空を綺麗に撮ることができています。しかしながら星が写りすぎてしまっているため、どこに何の星座があるか、見慣れていない方だとわからないかもしれません。さらに、このような写真は市街地からある程度離れた空が暗いところにいかなければならないため、移動手段が必要になります。次は標準レンズを使って撮影をした写真です。

写真2

標準レンズを使って撮影した星景写真

写る星空の範囲は狭くなってしまいますが、その代わりに一つの星座を大きく切り取って撮影することができます。さらにソフトフィルターを用いれば、より星座を強調させることもできます。明るい星で構成されている星座であれば、市街地から少し離れるだけで見つけることができるでしょう。

これ以外に、星が点ではなく線になっている星景写真もあります。

写真3

比較明合成をした星景写真

これは「比較明合成」という合成手法を用いて作り出した写真になります。星空の動き(=日周運動)を表現する際には、必須になる技術です。

これらの星景写真は、それぞれ使う機材や撮影方法が異なってきます。もう一度言いますが、まずどういった星景写真を撮りたいかというイメージを膨らませて、それに必要な機材や撮影方法を習得すること、これが重要です。今回は、星景写真の中で最も人気のある「広角レンズを使った満天の星が写った星景写真」の撮影手順と設定についてご紹介したいと思います。

基本的な星景写真の撮影手順

星景写真は以下のような手順で撮影を行います。

  1. カメラ、三脚などの機材の組み立て
  2. ピント合わせ
  3. 構図合わせ
  4. 試し撮り
  5. ピント、構図、明るさなどの確認
  6. 本番の撮影

星空のピント合わせは、ライブビューで拡大+マニュアルフォーカスで!

星景写真では、星を使ってピント合わせを行います。ですが、星は遠く遠くにある小さな点光源。ファインダーでピント合わせを行うことは至難の技です。そこで、デジタルカメラではライブビュー機能を利用して撮影を行います。

写真4

ライブビューの画面上に(ピンボケの)明るい星が写っている写真

明るい星がライブビューの画面上に写るようにカメラの構図を調整します。撮影したい構図はあとで決めるため、まずはピントを合わせることを最優先にしてください。

写真5

マニュアルフォーカスでピント合わせてピントを追い込んだ状態の写真

ライブビューの拡大機能を利用しながら、星にピントが合っている状態になるまでピントリングを回します。点像が一番小さくなるところが目安です。

なぜピントリングを回しきったところが無限遠ではないのか

デジタルカメラのオートフォーカス対応レンズは、ピント合わせをする際、被写体との距離の前後を探りながらピントを合わせます。もし、数km先にある山並みや鉄塔などでピントを合わせようした時、つまり無限遠の状態の時ですが、ピントリングにある程度アソビがないと、ピント合わせを行うことができません。そのため、ピントリングは無限遠マークよりちょっと多く回るようになっているのです。

構図合わせは、超高感度に設定して試し撮り!

ピントが合ったら次は構図合わせです。ここではまず感度をできるだけ高くして、試し撮りを行い、構図合わせを完了させることを最優先にしましょう。超高感度にする理由は、その分シャッタースピードを早くすることができるからです。こうすることで、構図合わせに費やす時間を短くすることができます

写真6

試し撮りした写真

この写真では一見するとわかりにくいですが、超高感度にしているため、ノイズがたくさんのっています。

写真7

写真6の構図を定め、適正露出を設定した写真

その後、構図の微調整、ホワイトバランス、明るさなどを調整して本番の撮影を行います。

星景写真の基本的な設定

星景写真は撮影する環境、月明かりなどによって大きく設定が変わってくるため、決まった設定というのはありません。ですが、おおよその目安を覚えておけば、あとは現地の環境に合わせて微調整をするだけですみますので、まずは下の設定を基本として覚えておきましょう。

星がよく見られる環境の場合(郊外)
ISO感度 800〜1600
シャッタースピード 10秒〜20秒
絞り レンズの開放値
写真8

上記の設定で撮影をした作例

明るい星が数個見られる環境の場合(市街地)
ISO感度 400〜800
シャッタースピード 5秒〜10秒
絞り レンズの開放値
写真9

上記の設定で撮影をした作例

それ以外に設定しなければいけない基本的な設定は下記の通りです。

- ホワイトバランス

ホワイトバランスは、蛍光灯もしくは電球がお勧めです。星空を少し青みがかった状態で撮ることができます。明るい月が出ている夜空、また街明かりの影響が強い市街地付近での撮影の場合は、オートホワイトバランスでも構いません。

- 高感度ノイズ低減

弱〜標準がお勧めです。強めの処理をしてしまうと、全体的なシャープネスさが失われてしまい、さらにカメラによっては、星の点像をノイズだと勘違いして消してしまうこともあるため、注意が必要です。

- 長秒時ノイズ低減

撮影後、画像処理ソフトを使って編集をすることが決まっている場合にはオフでも可。それ以外の方や、まだ星景写真撮影に慣れていないような方は、オンにしておきましょう。長秒時ノイズ低減をオンにすると、シャッターが切れた後、ノイズ処理の時間が別途追加されますので、連続してシャッターを切ることができなくなります。

まとめ

第2回目の今回は、基本的な星景写真の撮影手順、設定についてご紹介しました。第3回目は応用編ということで、星景写真の撮影に使える、様々な周辺機器についてご紹介したいと思います。

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北山輝泰

北山輝泰

皆様、初めまして。この度、星景写真についての記事を執筆させていただくことになりました、写真家の北山輝泰( きたやまてるやす )と申します。
専門は星空の写真です。星景写真や星座写真を中心に、国内はもちろん、年に数回、海外に行って撮影もしています。写真を撮ることも好きですが、星空の神話や星の名前の由来などを調べたり、プラネタリウムや科学館を巡るのも好きです。
また、NIGHT PHOTO TOURSという団体を立ち上げ、夜をテーマにしたワークショップを企画し、運営しております。ご興味がございましたらぜひお問い合わせいただければと思います。