初めての星景写真「#2 赤道儀を使おう」

初めての星景写真「#2 赤道儀を使おう」
写真家 茂手木秀行

写真家 茂手木秀行(もてぎ ひでゆき)

1962 年東京生まれ。日本大学芸術学部卒業後、出版社マガジンハウス入社。2010年フリーランスとなる。1990年頃よりデジタル作品制作と商用利用を始める。中学生の時に天文部に所属して以来、天体、星景の撮影はライフワークであり、多くの個展やセミナーを行ってきた。JPS 正会員、APA 正会員、写真学会会員

赤道儀を使うメリット

デジタルカメラの高性能化により、近年急激に星空の撮影を楽しむユーザーが増えてきた。しかしながら、通常の撮影とは勝手が違うことも多く、最初の一歩が踏み出せないユーザーの声を多く聞くようになった。

本稿はそうしたユーザーの手助けとなるよう心がけ記してゆく。とはいえ本項だけではわからないことも多いかもしれない。わからないことは他の資料にも当たり、一つ一つ知っていこう。知ることの喜びも写真の大切な要素であるからだ。

ともあれ、星空の下静かな空気に包まれる時間を楽しんでほしい。表紙の写真は春の夜明け、東の空から横倒しに登ってくる天の川中心部だ。毎年この時期を楽しみにしている。宇宙の中にいることを実感しつつ、夜明けを待つ。その静かな時間が豊かで、大切なものであると心底思えてくるのだ。

さて、今回の話題は赤道儀。星を点に写すための道具だ。星景写真は三脚だけで撮影することができるが、露光時間が長くなってくると、星は線となり点として写らず、思った印象と違ってしまう。そこで、星の動きを追いかけて星を点として写す道具・赤道儀の出番なのだ。

星の座標を知る

赤道儀を使う前に、まず星の座標を知っておこう。前回紹介したスマホアプリでも星の座標や情報を把握できるが、天球儀を見ると星空全体と星座の位置関係を把握しやすい。

天球儀は全ての星までの実際の距離を無視し、球体の表面に星を配置したものだ。ここで地球儀を思い起こしてほしい。地球上では緯度と経度を指定することで特定の位置を示すことができる。また回転する軸の北が北極、南が南極であり地球の自転軸として表されている。

同様に天球儀でも緯度と経度により特定の星の位置を示すことができる。天球上の緯度・経度は赤緯・赤経と呼ぶ。同様に北は天の北極、南は天の南極となり、両軸を結んだ回転軸は極軸と呼ぶ。

天球儀を見る際の注意点は、我々が見ている夜空を外側から見ているという点だ。つまり我々は天球の内側から夜空を見上げている。

もうひとつ想像を巡らせて、天球儀の中に地球儀を入れてみよう。左図のような状態で地球が回転するため星が動いていくのをイメージしやすいはずだ。地球が回転する軸がそのまま天球の回転軸であり、その延長線上北側にあるのが天の北極であり、その近傍にある星が北極星である。地球の一日つまり一回転は24時間であるが、その間に地球は公転するのでその差分から星はおよそ23時間56分で天球上を一周する。

ここでさらに赤道儀を考えてみよう。ひとつの回転軸を天球の回転軸(極軸)と並行にし、およそ23時間56分で回転するようにすれば、長い露光時間としても星を点として写し止めることができるようになるのである。以上が赤道儀を使うための予備知識だ。

三脚のみの撮影では8秒を超えた露光では星が流れてしまう。Skymemo Sを使って星の動きを追いかけたので、露光時間を長く、感度は低く設定できた。そのおかげで天の川の淡い部分までディテールよく描写できた。

Nikon D850 SAMYANG XP14mmF2.4
F2.8 60秒 ISO2500 WB晴天 Skymemo S使用

Skymemo Sの使い方

ここからはケンコー・トキナー Skymemo Sの使い方を見ていこう。

STEP 0Skymemo Sを用意する

まずは同梱品の確認だ。緑の枠内がレンズキャップを除いた製品の同梱品だ。

製品本体と付属品

Skymemo S本体
三脚への取り付けは3/8インチネジ(カメラ大ネジ)で行うが、通常のカメラ小ネジへのアダプターも付属している。電源は単3電池4本のほかUSB経由で給電できるためモバイルバッテリーも利用できる。搭載できる重量は5キロまで。精度の良い据付など条件が整えば焦点距離200ミリ、露光時間5分まで星を点として写す能力があると言われている。正確に北極星に向けて据付をするための小さな望遠鏡・極軸望遠鏡が内蔵されている。

② 明視野証明装置
本体の極軸望遠鏡の視野には北極星を導入するための指標・レチクルが刻まれているが、これを見やすくするために視野を少し明るくする。

③ ショートプレート
雲台を取り付けるためのプレート。カメラ大ネジになっている。天体望遠鏡で一般的に使われているアリガタ、アリミゾとなっており、社外品も含めさまざまなアクセサリーと交換できる。

別売品

④ 自由雲台
付属のショートプレートを介してカメラを取り付けるために自由雲台が必要になる。

⑤ 微動雲台:スカイメモS用微動雲台
Skymemo S本体を正確に北極星に向けるための雲台。これがなくても三脚付属の雲台でも北極星に向けることができるが、微動雲台がを使う方が圧倒的に手早く、正確に据付できる。

STEP 1ロケ地で北極星を見つけよう

北天に向かってSkymemoSを設置したところ

星を点に写すためには、Skymemo Sを北極星に向ける必要がある。まずは北極星を見つけなければならないが、一般的には北斗七星、もしくはカシオペア座から辿っていく。北極星はこぐま座の尻尾の先にあたるが、北斗七星と同じようなひしゃくの形の先端である。これらの星の並びを覚えておこう。北斗七星、カシオペ座の並びで赤い線にした部分をそれぞれ5倍延長した先にある白い星が北極星だ。星の位置は季節・時刻によって動いていくので、常にこの写真のように見えているわけではない。日本国内であれば年間を通して北斗七星かカシオペア座のいずれかは見えているので、まずはどちらかを見つけるようにする。

 

ワンポイントアドバイス

双眼鏡を使おう

星景撮影を補助する道具として、また星を知るための道具として双眼鏡は大切だ。

夕方からの撮影など薄暮の残る時間や薄雲があるような状態では北極星を見つけにくいことが多い。その場合は双眼鏡を使って北極星を見つけよう。防水機能付きで倍率は5〜8倍、口径は30〜50ミリの双眼鏡がおすすめだ。

最初の一台なら口径30ミリクラスがコンパクトで使いやすい。双眼鏡は北極星を見つける実利だけではなく、天文への理解を深める最良の道具である。撮影終了を待ちながら双眼鏡での星空散歩をぜひ楽しんでほしい。

おすすめ双眼鏡3選

STEP 2Skymemo Sを雲台にセッティングする

SkymemoSを設置。微動雲台があると精密な極軸合わせができる。

北極星が見つかったらSkymemo Sを準備しよう。
写真は北極星に向ける作業をする直前の状態。下から上へと組んでいくと安全だ。まず三脚付属の雲台を取り外し、別売品の微動雲台を取り付け、次に本体だ。本体前方に取り付けているのは明視野照明装置。スマホのコンパスなどを利用して大まかに北に向けて設置するが、大事なポイントは三脚を水平にすることである。微動雲台に水準器が付いているので正確に合わせよう。本体の仰角は撮影する場所の緯度と同じになるので、これもスマホなどで確認しておくと良い。

明視野照明装置(付属品)を取り付けたところ。雲台とカメラを取り付ける時にはこれを外す。

本体前部(北側)には極軸望遠鏡望遠鏡の対物レンズがある。この前に明視野照明装置を取り付ける。

別売の微動雲台はSkymemo Sを精密に北極星に向けるために使う。まず水準器の気泡を中心の黒円の中に入るように三脚の長さを調整する。高度調整はギヤ式なのでノブの回転だけで良いがロックレバーの締め忘れに注意。水平調整は両側のネジで押すタイプであるので、両方を一度に操作するか、片側を緩めてからもう一方を締め付ける。少々慣れが必要だ。

STEP 3北極星の時角を合わせる

時角とは天体の位置を子午線を基準に天の赤道に沿って測った角度である。北極星は真の天の北極から約1度離れているため時刻によって位置が変わる。よって時角を計算することで、より正確にSkymemo Sを天の北極に向けることができるSkymemo S本体後部には円形の時角計算尺が装備されている。

外周リングは時刻、内側円盤は日付、最も内側の目盛は経度補正であるが、同じ時刻でも経度によって補正が必要なためだ。基準(0)は各国での標準時を定めている場所の経度である。日本では明石であり東経135度となる。そこで例えば千葉県東京湾側で撮影すると東経はおよそ140度であるので、E(東)へ5度補正する。経度差の補正を行なってから、外周リングと内側円盤の目盛を現在の日付と時刻に合わせる。経度差は内側円盤のみ、日付と時刻は本体の回転で行う。

STEP 4北極星を指標位置に合わせる

時角を合わせてから、最後部の極軸望遠鏡接眼部を覗くと赤い視野に十字線と円形の指標が見える。十字線には0、3、6、9の文字が見えるが単位は時である。時角を別途計算する時に使うもので、時角計算尺を使うSkymemo Sではこの数値は無視して構わない。北極星を導入する指標は常に6時の線と円の交点である。微動雲台の高度と方位ノブを回してこの位置に北極星を合わせればSkymemo Sの回転軸と地球の自転軸が並行になったことになり、星は点に写る。この作業を極軸合わせという。目盛がぼやけて見えにくい場合は接眼部外周を回して視度を調節することができる。目盛がシャープに見えるように適宜合わせると良い。

 

北極星導入のコツ

Skymemo Sの極軸望遠鏡は倍率5倍、視野は7度であるが倒立像と言って上下左右とも反転して見える。200ミリ望遠レンズ程度の視野の広さがあるが、慣れないうちは北極星を極軸望遠鏡の視野に捉えることが難しい。コツは極軸望遠鏡を覗かずに本体を最初にしっかり北極星に向けることと極軸望遠鏡を両眼を開いて覗くことの2点である。以下手順を示す。

  1. 現在時刻の時角計算を終わらせておく。
  2. 目視で北極星と自分を結んだ線の上に本体をまっすぐ設置する。
  3. 両目を開けて極軸望遠鏡を覗く。右目は極軸望遠鏡、左目は夜空を見る。
  4. すると写真のように星空に赤い円が浮かんでいるように見える。
  5. 少し左目の視野を意識すると目視の星空が見えてくるので北極星を探す。
  6. 右目で見えている十字線が左目で見えている北極星に寄っていくように微動雲台を動かす。高度ノブから先に動かしてみると良い。
  7. 右目で見ている十字線が左目で見ている北極星と十分近くなってくると十字の交点(視野中心)の反対側に北極星が見えてくる。
  8. そのまま十字の交点に北極星が重なるように微動雲台を操作すると右目で覗いている極軸望遠鏡の視野内に見えている北極星と左で目視している北極星が重なって見える。
  9. この状態では確実に北極星を極軸望遠鏡視野中心に捉えたことになる。
  10. 微動雲台を調節して円目盛6時位置に北極星を合わせて完了。必要に応じて時角計算をやり直す。

上記の方法でうまく極軸望遠鏡に北極星を捉えられない時は双眼鏡を使うと良い。Skymemo Sの後に立ち、双眼鏡で北極星を見つける。少し双眼鏡を振るようにすると北極星は容易に見つかる。天の北極付近で明るい星は北極星だけであるからだ。双眼鏡で北極星を捉えたままゆっくり腰を落とし、Skymemo Sの上に双眼鏡をゆっくりと置く。しっかり双眼鏡を置くにつれ、北極星がずれていくので、片手で双眼鏡を抑えながら微動雲台をもう一方の手で操作し、双眼鏡の視野中心に北極星を導くと、上記手順7のように極軸望遠鏡の視野の中に北極星を捉えることができる。

アプリで極軸合わせが簡単に。 スカイメモSW特集ページはこちら

ここまで極軸望遠鏡の使い方を詳しく解説した。Skymemo Sの性能を発揮させるためにはは正確な極軸あわせが全てであると言える。一方、現代のデジタルカメラでの星景写真において、24ミリ以下の焦点距離で30秒以下の露光をする場合は詳述した通りの極軸合わせをする必要はない。この条件での限定された撮影ではSkymemo Sの最高性能を求める必要がないのだ。極軸望遠鏡の視野中心に北極星を置くだけでも十分だ。しかしながら極軸合わせに慣れてくると大雑把な合わせ方も、正確な合わせ方も1分と時間は違わない。よって慣れないうちは神経質にならず、まずは撮影を楽しもう。慣れるに従って正確な極軸合わせをして行けば良い。

STEP 5自由雲台とカメラを載せる

極軸合わせが終わったら、いよいよ自由雲台とカメラを乗せて撮影だが、カメラの乗せ方にもちょっとしたコツがある。Skymemo Sの搭載重量は5kgであるので星景写真で使うような焦点距離の短いレンズでは、そうそう重量過多となることはないが、取り付け方によっては過荷重となったり精度不良となってしまうことがある。

Skymemo Sなど赤道儀は一般にメインとなる減速ギアにウォームギアが使われているが、送り方向に荷重をかける必要がある。そのため、北半球では東側を少し重くすることが基本となっている。左上写真はSkymemoSを北側から見たところだが、ここに示した黄色い線の上に重さが乗るようなイメージにセットアップすればOKだ。左下写真が一例だが、横位置で撮影する場合はどの方向にカメラを向けてもほぼ問題はない。

真上ではなく黄色の線あたりに重さがかかるようにするのがコツ
横位置では重量級カメラでも問題になることは少ない。

問題となるのは縦位置で撮影する場合だ。カメラ底面にネジ穴があるため、縦位置での撮影は多くの場合、バランスが破綻する。左上写真。そこでL字のプレートなどを使い右写真のようにセットアップすると良い。

縦位置でこのような状態にセットするとギアを破損してしまう可能性が高い。
L字プレートを使うと問題のない範囲でバランスを取れるようになる。

カメラの使い勝手が変わりにくいI型もお勧めだ。

STEP 6ダイヤルを回して追尾撮影を開始する

Skymemoシリーズがロングセラーであることの理由は基本性能の高さと使い方がシンプルであり、設定ミスなどが少なく確実な撮影が行える点だ。撮影は夜間であり、暗い中での操作、美しい星空を求めて雪の冬山などの厳しい寒さなど悪条件で人的要因のミスを抑えるのは機材操作のシンプルさなのだ。Skymemo Sでは自光式のダイヤルで追尾速度を変更するようになっており、暗い中でも間違いなく扱えるようになっている。

主な機能

①ダイヤルは追尾スピードの変更が可能

Skymemo S東側側面には大きなダイヤルが設置され、回転速度つまり星を追いかける速度の変更ができる。OFFも含めて8ポジション。設定できる速度は7種類だ。赤道儀の速度はトラッキングモードと呼ばれることも多い。ベースとなるのは『★』マーク。このポジションに合わせるのが基本の使い方だ。OFF以外のポジションでは赤いLEDバックライトが点灯するので一目でポジションを確認できるようになっている。

各ポジションの速度
① 恒星時 星の速度。約23時間56分で一回転する。
② 太陽時 太陽の速度。約24時間で一回転する。日食撮影などで使う。
③ 月速度 月の速度。恒星時よりおよそ5%遅い。月蝕撮影などで使う。
④ 0.5X 恒星時の0.5倍の速度で回転する。星景撮影、星景インターバル撮影で使う。
⑤ 2X 恒星時の2倍の速度で回転する。星景インターバル撮影で使う。
⑥ 6X 恒星時の6倍の速度で回転する。主に日中のインターバル撮影で使う。
⑦ 12X 恒星時の12倍の速度で回転する。主に日中のインターバル撮影で使う。

④ 0.5Xについて

星景写真において、Skymemoなど赤道儀を使い恒星時で回転して撮影すると星は点に写るが地上の風景はブレることになる。そこで、恒星時の半分の速度で回転し、星と風景双方をシャープに写し止めようとするモードである。しかし、これは両方がブレるということも意味している。このモードが生まれてきた頃はまだフイルムでの撮影が主流であったことに留意が必要だ。

フイルムにはイラジェーションと言って、フイルム裏面に当たった光が反射して、再度感材に写り込む現象がある。星の像はこれによって肥大化した画像となった。この現象によって、星の等級差は拡大されて1等星や2等星が目立つ仕上がりとなった。今日のデジタルカメラで星を撮影すると星の等級差がわかりにくく1等星が目立ちにくいのはこの現象が発生しないためだ。

話をもとに戻すとフイルムでは明るい星の像が肥大化するためにブレあるいは点ではなく光跡として写る現象が目立ちにくいのだ。よって0.5倍速で撮影すると大変に良い仕上がり結果を得られた。一方イラジェーションの発生しないデジタルカメラでは星と風景の双方が流れた画像となってしまい、中途半端な表現となってしまうことが多い。一方、星景タイムラプス映像を作るためにインターバル撮影をする際には、とても良い結果を得られる。星にも風景にも動きを加えて、ダイナミックな映像にできるのだ。静止画撮影にはお勧めしないが、タイムラプス撮影には大変お勧めというのが筆者の見解だ。

②その他スイッチの機能

使用頻度の低い機能の切り替えは本体西側側面に配置されている。主には回転方向の変更や状態のインジケーターなどである。

各ポジションの速度
  • ① 逆回転 - 押している間12倍速で逆回転する
  • ② 早送り - 押している間12倍速で早送りする ①②は位置の微調整に使うが100ミリ程度以上の望遠レンズで使うときに効果が高い。
    また、Skymemo Sの状態を示すインジケーターとしても作用する。バックライトが点灯時は正常動作、0.5秒間隔の点滅時は電池残量低下、0.3秒間隔の早い点滅ではオーバーロードなど深刻な異常を表す。早い点滅の時には一旦電源をオフにして原因を取り除く必要がある。カメラが重すぎる、バランスが悪い、カメラが三脚などに当たって回転が止められているなどの状態が考えられる。
  • ③ 3ポジションスイッチ - 回転方向と撮影モードの変更。 Nは北側から見て時計回り。北半球での撮影に使う。Sは南半球。TIME LAPSは反時計回り。
  • ④ snapコネクター - 別売のシャッターケーブルのコネクター。カメラのシャッターをSkymemoでコントロールしてインターバル撮影を行うときに使う。速度のモードダイヤルおよび3ポジションスイッチがどのポジションに入っていてもケーブルで繋げばインターバル撮影が行える。シャッターが切れる間隔はモードとポジションの組み合わせによって固定されており、細やかな変更は行えない。組み合わせについては取扱説明書を参照してほしい。
  • ⑤ Auto Guider社外品のオートガイダーを接続するためのコネクター。300ミリなどの望遠レンズを使う場合や、1時間など特別に長い露光をする場合に有効だ。
  • ⑥ USBコネクターファームアップに用いるほか、給電できるのでモバイルバッテリーなどで運用することができる。冬など気温の低い時期にはモバイルバッテリーを保温しつつ給電すると良い。

Skymemo Sの撮影データ比較

SkymemoSの使い方をひとしきり解説したところで、星を追尾することの効果を確認してみよう。

比較は全てSkymono Sで星を追尾して撮影したもの。追尾速度は恒星時とした。よって、星は点として写っているが地上はぶれている状態である。地上のブレがどの程度気になるかは、被写体、被写体までの距離、焦点距離、画素数などによって変化する。変化の要素に対してサンプル数としては少ないが、ここではカメラをソニーFX3(1200万画素)、ニコンD850(4500万画素)レンズは14ミリと24ミリとした。

RAWデータから現像したが、比較のためノイズ処理は行っていない。そのため通常より多くノイズが出ている。

比較データ 1

南中に近い天の川を撮影した。感度を下げるにつれて天の川の淡い部分のディテールがよく出てきている。

共通データ:Sony FX3 SAMYANG AF24mmF1.8 絞りF2.8 WB:晴天 (RAW現像・ノイズ処理なし)

等倍拡大

拡大部で地上風景のブレを見てみると60秒では明かなブレ。30秒では明かに解像感が減少しているもののプリントあるいは表示サイズによっては許容できる。8秒ではシャープだがノイズが多く、15秒ではやや甘くなるもののシャープさも感じ、更にノイズは少なめで好ましい。

比較データ 2

南中に近い天の川を撮影した。感度を下げるにつれて天の川の淡い部分のディテールがよく出て、かつ画素数が多いせいもあって滑らかな表現となっている。地上を拡大してみると15秒、30秒ともにシャープ。30秒ではISO2000となるがノイズも少なく好印象。60秒ではやや甘くなるもののノイズは激減する。120秒ではISO500となり滑らかな画像が得られるが明らかなブレ画像となる。

共通データ:Nikon D850 SAMYANG XP14mm F2.4 絞りF2.8 WB:晴天

等倍拡大

拡大部のブレをみると15秒、30秒ともにシャープ。30秒ではISO2000となるがノイズも少なく好印象。60秒ではやや甘くなるもののノイズは激減する。120秒ではISO500となり滑らかな画像が得られるが明らかなブレ画像となる。 

総じた評価

今回はノイズ比較のため、適切なノイズ処理を行っていない状況である。この条件では24ミリでは15秒、14ミリでは30秒までが十分にシャープさがあると評価できる。更に長い露光となる24ミリ30秒、14ミリ60秒の画像では甘さがあるものの被写体によっては許容範囲と言える。更に言えば、適切なノイズ処理を施した上でシャープフィルターを詳細にかけると十分にシャープさを感じられる画像とすることができる範囲だ。これはISO感度下げられるからこそ得られるメリットだ。画素数について言えば、同じプリントサイズを得るとき画素数が多い方が高周波つまり細やかなディテールは早く失われるが輪郭がブレても情報量が多い分極端なブレとは感じにくいことがあり、画素数が多い方が有利に働くこともある。

総論として星景写真という分野であるからこその本質的な描写を考えると、地上は夜で暗くなるためディテールは見えにくい。また、無限遠にピントのピークを合わせるため、手前にある風景はたとえ被写界深度に入っていてもピントのピークではないため、最高の解像度が出ている状態ではない。この点を加味しつつ、大雑把に設定をまとめてみると恒星時で星を追尾する場合、焦点距離24ミリ以下でISO1000~2000、露光時間を30秒以下とすると星は点に写りつつ、地上の風景も十分なシャープさで写し止めることができる。

Skymemo S で撮る星景写真

Loxiaはケンコー・トキナーが扱うZEISSブランドのミラーレス向けMFレンズ群だ。極端な明るさを求めていないがゆえ、小さく高級感があり、格別な光学性能をもった趣味性の高いレンズである。小ぶりなサイズは、SkymemoSと一緒に持ち歩くのにも最適で、いつもより一回りも二回りも小さなカメラバックで星景撮影を楽しむことができる。それを活かし、スナップ的な星景写真を撮ってみた。

共通データ Sony FX3  Skymemo S  恒星時

初めての星景写真 記事一覧