広角レンズ実践攻略法!日の丸構図や腹切り構図は本当にダメなの?

広角レンズ実践攻略法!日の丸構図や腹切り構図は本当にダメなの?

ご法度構図、日の丸&腹切り構図って本当にダメなの?

写真の基本を学ばれた方は、被写体が真ん中にくる「日の丸構図」や上下を真ん中で分けてしまう「腹切り構図」はご法度という事を知っていらっしゃるかと思います。

広角レンズでも同じことが言えるのですがこの写真をご覧ください。

この写真を撮影する際、最初はセオリー通り三分割構図で構図をとりましたが、思い直して二分割構図で構図を取りなおしました。理由は、この写真の伝えたいテーマが水鏡だからです。

水鏡は"シンメトリー"で撮影するとより強調されますし二分割構図で撮影すると落ち着きのある「静かな構図」になるためここはキッチリに二分割に、そして、印象的な山並みと一軒宿のホテルをキッチリ真ん中に配置して日の丸構図で撮影しています。ご法度といわれる日の丸構図&腹切り構図ですが、収まりが良く広角らしいパースが上下左右均等に付くため素直な奥行きも感じられるので、この画は敢えてこの構図で撮影しました。他の理由もありました、お仕事もされている上級者の方は、ままあることだと思うのですが仕事上文字スペースが必要になることがあります。そのため、二分割にして下部に文字スペースを空けたという事もあります。2分割で下部を空けておけば文字で潰れてしまう場所を除くと事実上は三分割(文字スペースを含めると四分割)になるためそうした意味でも収まりが良い二分割構図にしました。

広角レンズで撮影する場合、時と場合によっては日の丸構図、腹切り構図を敢えて選ぶということも「あり」だという事を頭の隅に置いておいてください。

今度は日の丸構図についてのお話です。

日の丸構図は、広角レンズであればテーマがよりハッキリするところがあるので、僕は敢えて日の丸構図で撮影することがあります。

真ん中の黄色い〇を見ていただければ一目瞭然、この写真は気持ちいいほどの「日の丸構図です」。

前述のように、日の丸構図はテーマ(主題役)がハッキリ伝わります。この写真のテーマは、古めかしい粋な路面電車です、そしてサブテーマ(副主題)は、普段路面を走る路面電車がショッピングモールの中にいる面白さです。それを一枚で完結させるため、広角レンズを使い撮影したものがこの写真です。

まず、撮影時に浮かんできたイメージを再現するための最適な焦点距離がワイド端11㎜(35㎜換算16㎜相当)でしたので、この写真は11㎜で撮影することにしました。なぜワイド端11㎜なのか?の理由はパースが最も付きやすいということが理由です。詳しくはおって解説しますので最後まで読み進んでいただくとありがたいです。さて、黄色い〇を見てください。テーマをはっきりさせるため路面電車を真ん中に置きました。

次に青の線を見てください、「動きのある構図」にするため、前述の「静かな構図」の二分割構図ではなく、路面電車のライトを基準にして西洋黄金比の1:1.6で上下を分割します。最後に赤い線を見てください。路面電車の赤いボディーカラーが終わる線とショッピングモールのお店のドア下の部分で水平の線を引き、画全体を安定させます。次に、屋根の骨組みを放射状に真っすぐ引き奥行き感を出します。そして、ここで「何故11㎜を選んで撮影したのか?」の理由が出てきます。天井部分の骨組がアーチ状になっています。このアーチ状の骨組みを使って「扇型」を作り、広がり感を演出したいと考えました。その際、最もパースの味付けが強くなるワイド端11㎜(35㎜換算16㎜相当)で画作りをすると、頭に浮かんだ自分のイメージを忠実に再現することができるので11㎜で撮影することにしました。

ご法度と言われる日の丸構図も、テーマを際立たせるためには敢えて使うことも「あり」だと思います。既成概念にとらわれずもっと自由に自分が「いい!」と思う構図で撮影してみてください。また、構図構成に迷った時には、解説させていただいたパースを使って線を引くということを参考にしていただければありがたいです。ちょっと長くなってしまったので、簡単にポイントをまとめますと前述のような「静かな構図」で撮るのか?強くパースをつけて「動きのある構図」にするのか?上下の分割(左右の分割にも)に際黄金比を用いてみる、どこかに水平の線をきちんと入れ画を安定させる、など頭の隅に入れて構図構成をしてみてください。もう一点重要な点があります、それはディストーションの少ないレンズで撮影することが重要なポイントです。

僕がお話している「線を引く」ということはディストーションが少ないレンズですと、線が引きやすく効果も大きいのですが、ディストーションが大きいレンズですとタワミが大きく収まりが悪い場合があります。広角レンズで撮影する場合ディストーションが少ないレンズで撮影することをお勧めします。

この記事の作者

小河 俊哉

小河 俊哉(おがわ としや)

東京都出身。
自動車整備士、カースタントマンなどを経てフリーフォトグラファーとなる。
自然、風景、クルマ写真などを専門とし雑誌、クラッシックカーイベントなどで活躍。 現在、作品集作成のため精力的に国内外で撮影中。