広角レンズ実践攻略法!星景撮影のコツ

広角レンズ実践攻略法!星景撮影のコツ

星景撮影のコツってどんなことがあるの?

空いっぱいに広がる星の夜空を撮影してみたい!広角レンズを使う人の撮ってみたい被写体の一つだと思います。僕自身もずいぶん昔にそんなことを思い広角レンズを買いました。さて、買ってみたはいいものの、どうやって撮ればいいのでしょう?
入門編では星景撮影のカメラセッティングを伝授いたしましょう。

まずは絶対に三脚が必要です

カメラの下に何か引いてなんとか角度を調節して・・・と、撮れないこともないのですがやはり三脚一つあるだけで全然楽に撮影ができます。お勧めは、なるべくしっかりとした大型の三脚です。僕はスリック製のカーボン三脚を自由雲台に乗せて使っています。

星空は暗い被写体ですのでどうしてもISO(感度)は高めになります。しかし、高ISO(高感度)で撮影するとどうしても高感度ノイズが出てきます。できれば・・・なるべく低ISO(低感度)撮影したい。ただ撮るだけならISO12800やISO25600、ISO51200でも撮影はできるのですが、画はザラザラ、ノイズリダクションを掛けてもノイズリダクションのせいでなんだかぼんやりした画になってしまいます。ですので、なるべく低ISO(低感度)撮影したいのです。

ISO感度比較(左ISO51200、右ISO200)

せっかく撮るのであれば出来るだけ綺麗な星空の画を残したいですから三脚を使って撮影しましょう。

次はカメラの設定とレンズの明るさです。

最初のページに使った天の川の写真の撮影設定をお教えします。

カメラ:Nikon D500 (APS-C) / レンズ:Tokina AT-X 14-20 F2 PRO DX / F2.2 / 13秒 / ISO3200 / 撮影モード マニュアル / WB / オート2

ここで重要になってくるのがレンズのF値です。
先ほどお話ししたようになるべく低ISO(低感度)で撮影したいのであれば、撮影に使うレンズのF値が明るいとその分、光が入る量が多いので、ISOを下げたりシャッタースピードを速くしたりと撮影設定に自由度が出てきます。なにより描写も良いので明るいレンズはぜひお勧めしたいところです。

僕は仕事でも作品撮影でもTokina AT-X14-20 F2 PRO DXをよく使用します。ズームでありながらもF2という驚異的な明るさと、頭一つ抜けたコントラストの高さが、ナイト撮影、タイムラプス撮影、夜空撮影の現場で起こる「さてどうしよう・・・」という出来事に幾度も助けになってくれました。このレンズは掛け値なしにお勧めです。

次にシャッタースピードのお話です。
シャッタースピードは撮影データを参考にしていただいて大体8~13秒辺りで撮影されることをお勧めします。

先ほどのお話につながりますが、ISOを上げられないのならばシャッタースピードを長くすればいいじゃないか?とお考えになった方もいらっしゃると思いますが、そのお話はこのあとでしっかりとお話致しますのでちょっと待っていてください。

最後にピント合わせのお話です。

ピント合わせってどうすればいいんだろう・・・
実はこれ、僕が初めて星空の撮影をしたときに思った疑問です。初めてチャレンジする星景撮影、当時の僕はどうすればいいのかさっぱりわかりません。最初のうちは「∞」の真ん中に合わせて撮ってみたものの、拡大してよく見るとなんかぼんやりしている。

じゃあ、AFを使って遠くの街明かりにピントを合わせて撮ってみる。
ピントを合わせた遠くの街明かりの辺りは合焦しているのだけれど、あれ・・・やっぱりなんか星はぼんやりしている。そこで何とか苦労しながら、きちんとピントを星に合わせてみると・・・ちゃんと撮れてる!

昔のカメラは(DSLRになってもしばらくは)、現在の一眼レフやミラーレスのようにライブビュー撮影ができなかったので、ファインダーの画を拡大したり、一眼レフでは撮影後の映像をリアモニターで拡大したりしてピントを微調整しながら星空を撮影していました。現在の一眼レフやミラーレスは、デジタル黎明期に比べると遥かに性能が上がりライブビュー撮影は当たり前にできるようになり、被写体の拡大確認も、当時とは比較にならないくらい解像度の上がったリアモニターで撮影前に確認できるため星景撮影が本当に楽になりました。

さて、前置きが長くなってしまいましたが正確なピント合わせです。
初級編の皆様は、まずピントを正確に合わせることが大事ですのでまずはそこからいきましょう!

1)まずは夜空を眺めて一等星を見つけます。見つけましたら、DSLRの方はライブビューモードへ変更しリアモニターに見つけた一等星を画面中央に持っていきます。ここではピント合わせだけを行いますのでフレーミングのことは考えず、ひとまずピント合わせが楽なレンズの真ん中に一等星を持っていきます。

2)マニュアルフォーカスへ変更
カメラに組み合わせるレンズや各カメラによってマニュアルフォーカスへの変更の仕方が違いますので付属の操作マニュアルなどで確認してください。因みに現在僕が星景撮影で頻繁に使うAT-X 14-20 F2 PRO DXはワンタッチクラッチフォーカスがあるため、カメラの設定とは関係なくピントリングを手前に引くだけでマニュアルフォーカスへと変更ができます。この辺りもお気に入りの理由です。

3)一等星をリアモニターもしくはEVFで最大拡大し、「ゆっくり」とピントリングを∞に向かって回します。
ゆっくり回すのがコツです!リアモニターもしくはEVFを見ていると、拡大した一等星が合焦していない状態の「滲んだ」ような状態から、だんだんと「白い〇」になり、そして「小さい点」になっていくことが分かります。さらにピントリングを回転させていくと、やがて「小さい点」は「白い〇」へ変わり「滲み」に戻ります。合焦は、その「小さい点」が一番小さくなったところが合焦です。レンズによっては触れる程度でピントが動いてしまうレンズもあるので、かなり微妙な動かし方になりますが諦めず何度か繰り返してみてください。くれぐれも合焦付近はゆっくり動かしてください。

そしてもう一つのコツですが、「小さい点」になった後、少しだけ「白い〇」に行き過ぎてから「小さな点」へ戻すのがコツです。これでピントが合いました!さあ、いよいよ構図を決めて撮影です。レリーズがあれば便利なのでレリーズをお持ちの方はレリーズを使って撮影しましょう。お持ちでない方はタイマーを使って撮影しましょう!

シャッタースピードを長くすればいいじゃないか?とお思いの方もいらっしゃると思います」とお話いたしました。なぜ、シャッタースピードを長くしないのか?その理由をお話します。ズバリ「星は動いているから」です。星は13秒以上露光させると点ではなく線になってしまいます。

分かりやすく2枚の写真を比べてみましょう。

左:25秒 右:10秒

一見するとこの大きさでは2枚とも止まって見えます・・・が!拡大してみましょう。

左:25秒 右:10秒

ご覧の通り25秒は星が動いてしまっていることが分かります。左の10秒は星が点のまま止まっています。僕は、星を点のまま撮影したいので露光時間は13秒までとしています。ですので、明るいF値のレンズが必要だと考えています。

星空撮影を専門にされている方は、赤道儀を使ったりコンポジットという方法で数十枚を重ねたりして一枚にするなどしこの問題を解決されているようですが、僕はできるだけ一枚で完結させたいと思っているので露光時間は13秒までにしています。もちろんこれは撮影者の自由ですので強制されることではありません。しかし、同じような考えをお持ちの方は、F2.8などの明るいF値のレンズで撮影されることをお勧めします。そのほうが描写も良いですしね!僕としてはTokina AT-X 14-20 F2 PRO DXをお勧めします!これホント良いんですよ。お気に入りレンズです。

これではただの宣伝になってしまうので、次の話ではより突っ込んだコツを伝授いたします!

焦点距離や撮影をする空の方向によっても露光時間が変わる?

この写真で使ったレンズは、フィルム時代に僕が使っていた単焦点35㎜のレンズをAPS-CフォーマットのDSLRにセットして撮影したものです(35㎜の単焦点レンズをAPS-Cで使いましたので焦点距離は35㎜換算で52.5㎜相当になります)。NGカットとしてHDDの中に眠っていた一枚です。コマ収差や球面収差、非点収差、像面湾曲、軸上色収差など・・・正直、収差のオンパレードです。

拡大して見てみましょう。

露光時間は15秒と先ほどお話した13秒とあまり変わらないと思われる方もいらっしゃると思いますが、52.5㎜のレンズで15秒露光するとしっかり星は線になってしまいます。そうなんです!焦点距離が伸びていくほど、星を「点」のままで撮影できる露光時間が短くなっていくんです。同様に、広角と言われる20㎜(35㎜換算)辺りの焦点距離と超広角と言われるそれよりも短い焦点距離との比較でも同じで、シャッタースピードを短くしないと動きを止めて撮ることができません。焦点距離が長くなると、その分より短い露光時間で撮影しないと星は点にならないという事を覚えておいてください。

もう一つ、撮影する空の方向によっても露光時間は変わるというところをお話いたします。星を点のまま撮影する場合、一番露光時間が稼げるのは北の方向です。

この写真は露光時間12分で撮影したものです。中心より少し下の辺りに北極星があります、北極星は極軸なので「点」のままです。そこから画面端にむかってどんどん星が点から線に代わっていることが分かります。東(画面右側)と西(画面左側)は結構長い線になっていますね、これが南側になるともっと動いてしまいます。残念ながら南側を長時間露光で撮影した写真が無いのでお見せすることができないのですが30秒も露光してしまうと星は確実に線になってしまいます。じつは、初級編でお話していた8~13秒の辺りで撮影すると言っていたのは、このことを言っていました。これまでお話したように、撮影するレンズの焦点距離や撮影する方角で露光時間が変わってしまうことがあることをぜひ頭に入れて撮影設定を考えてみてください!

 

さて、お次は上級者の方へ「改めて考えるピント合わせのコツ!」をお話いたします。

上級者の方であればピント合わせの手順は十分にご存じだと思いますが、いつものルーティーンにちょっとしたことを付け加えるだけで周辺の星描写や収差を抑えることができます。どんなテクニックなのか?上級編へお進みください。

改めて考えるピント合わせ

上級者の方は、初級編をすっ飛ばしてこられた方もいらっしゃると思いますが、敢えて初級編をご覧いただけるとありがたいです。初級編はピント合わせを画面(レンズ)中央部でやってみましょうと言っています。なぜか?レンズのおいしい部分は中心付近でありピントが合わせやすい。ゆえに初級の方については慣れるまで、解像の良い中心付近でピント合わせをしたほうが分かりやすく、またピンボケの可能性を回避しやすいからです。しかし、上級の方なのであればその心配は無用、しかも前説明なしに収差のお話もさせていただけますでしょうから一気に難しいテクニックのお話をいたします。写真は敢えて初級編で使った写真でお話させていただきます。

オリジナル画面の最右上をカット拡大 露光時間25秒 ピント位置中心付近

ご覧いただければわかるように長時間露光による星の流れもありますが、少ないながらも周辺流れとサジタルコマフレアの発生が見られます。正直これくらいなら少ないほうだと思いますが全倍あたりまで大きくプリントするとかなり目立ちます。レンズによってはこれに軸上色収差が追加され眉をひそめてしまうこともあります。しかし、これらを完全に消すことはできずとも低減させる方法があります。

オリジナル画面の最右上をカット拡大 露光時間10秒 ピント位置中心付近から画面1/3オフセット。

同一レンズではないので厳密な比較とは言えないかもしれません参考程度でごらんください。

先ほどの写真と比べるとこちらの拡大写真は、周辺流れやサジタルコマフレアがあまり見られません。先ほどお話した通り同一のレンズではないので、レンズそのものの性能が勝っている点もありますが、それを差し引いても低減されています。

その方法ですが、この写真を撮影する際ピント位置を真ん中合わせるのではなく、赤丸で囲った辺りでピントを合わせています。サジタルコマフレアは、球面、収差、非点収差、像面湾曲、コマ収差、軸上色収差など様々な収差が折り重なって発生します。この収差の塊を低減するには非点収差、像面湾曲(縦伸び横伸び)のバランスを取ることが低減の方法の一つになります。故にピントを決める際、真ん中と端部で非点収差、像面湾曲の出方を確認します。

このレンズの場合、赤丸の辺りがちょうどバランスが取れている辺りでしたので、そこでピントを合わせました。このバランスは、レンズによってバランスが取れる場所が違いますので、一度ご自分のお使いになっているレンズでご確認ください。また、僕の経験上ですが、この方法でピントを合わせるとソフトフィルターなどを使った場合、少しだけですがより効果が上がるようなので上級者の方にはお勧めします。

この記事の作者

小河 俊哉

小河 俊哉(おがわ としや)

東京都出身。
自動車整備士、カースタントマンなどを経てフリーフォトグラファーとなる。
自然、風景、クルマ写真などを専門とし雑誌、クラッシックカーイベントなどで活躍。 現在、作品集作成のため精力的に国内外で撮影中。